2020年初めより世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスにより、三密の回避、ソーシャルディスタンスの確保など、日常生活が一変しました。ニューノーマルとは、このような「新たな日常」のことを意味します。
本記事では、観光・旅行におけるニューノーマル(新たな日常)について、2021年1月現在コロナ感染者ゼロの国・パラオを事例に徹底解説しています。
今後さらに注目されるであろうサステイナブルツーリズム(持続可能な観光)についてもまとめているので、ぜひ参考にしてくださいね。
ニューノーマル時代の観光スタイルとは
コロナ禍による世界規模のパンデミックは、観光スタイルに大きな変化をもたらしています。
今までは休みをとって旅行するのが一般的でしたが、テレワークの推進(総務省)により観光地で仕事をしながら休暇も楽しむワーケーション、自宅で非日常が体験できるオンライン海外旅行など、旅行・観光のあり方が変わってきました。
新型コロナウイルスが収束したとしてもウイルスは地球上に存在し続けると言われており、今後は旅行中にも十分な感染症対策が求められることとなるでしょう。
ここからは、ニューノーマル(新たな日常)の観光スタイルについて、実例をあげながら詳しく解説していきます。
ソーシャルディスタンスを保った移動
まず最初に、日常生活に馴染んだのが「ソーシャルディスタンス」ではないでしょうか。
新型コロナウイルスは、咳やくしゃみなどの飛沫を鼻や口から吸い込むことで感染すると考えられています。また、感染していても症状があらわれない「無症状」感染者も多いのが特徴です。
そのため旅行や観光の移動時にも、感染させない・感染しないためにも、社会的距離の確保が大切となります。
たとえばJR東海新幹線では、ソーシャルディスタンスを保つため、以下のような取り組みを行っています。
- 余裕のある座席提供(混雑緩和)
- 空席状況を確認しながら座席指定可能
- きっぷうりばに距離を保つための目印設置
そのほか車両内では座席を回転させて対面状態での利用を控えるよう注意を呼びかけており、移動スタイルにも変化がみられます。ソーシャルディスタンスを保った移動が「新しい日常」となりつつあります。
また、自家用車での旅行など、公共交通機関を利用しない観光スタイルも増えてきています。
海外渡航前後のPCR検査
海外にいくときは、PCR検査の陰性証明書の提示、自主隔離などが必要となり、これまでとは違う旅行スタイルになります。
国によってPCR検査の受検時間や回数、自主隔離の期間が決まっているので、在外公館ホームページで最新の入国条件を確認するようにしましょう。
▼2021年1月27日現在の入国条件例
パラオ | フランス | |
---|---|---|
出発前 |
|
|
入国後 |
|
|
参考:在パラオ日本国大使館ホームページ,在フランス日本国大使館ホームページ
また、JALには、渡航先で新型コロナウイルス感染の症状が出た場合、気軽に相談できるサポート窓口があります。JALコロナカバーというサービスもあり、陽性が判定されたときには、渡航先での医療費・検査費・隔離費用をすべて無料補償※してくれます。
このように、ウィズコロナを念頭においた旅行が「新しい日常」となってきています。
※JALコロナカバー:2020年12月23日~2021年6月30日(出発分)期間限定
非対面式のチェックイン・アウト
旅館業法では、すべての宿泊者に対し「氏名・住所・職業」を記載するよう義務付けています。これまでは、ホテルや旅館にチェックインするとき、フロントで「宿泊者名簿」に手書きすることが一般的でした。
最近では、感染拡大防止のため、非対面式の自動チェックイン機を導入するホテルが増えています。今後はこのような非対面式チェックイン・アウトがスタンダードとなるでしょう。
顔認証システムを採用しているホテルもあり、接触を大幅に減らすことに成功しています。たとえば、三井不動産マネジメントが運営するホテル「sequence KYOTO GOJO」では、顔認証のみでチェックインから部屋の開錠、チェックアウトまで行うことができます。
このように、新型コロナウイルスで観光のデジタル化が進んでいるのが特徴です。
▼顔認証システムを導入しているホテル
なお、ほとんどのホテルや旅館では、非対面式の自動チェックイン機だけでなく、パーテーションの設置や定期的なアルコール消毒などを行っています。
キャッシュレス決済(電子決済)の徹底
厚生労働省が公表している「新しい生活様式」では、接触機会の少ない電子決済(キャッシュレス)を推奨しています。
とはいえ、とくに地方部の観光地は、クレジットカードや電子マネーの使用率が低く、キャッシュレス化が進んでいません。そこで経済産業省は「地域におけるキャッシュレス導入支援事業」を行うなど普及率向上に力を入れています。
その甲斐もあり、キャッシュレス決済を導入する店が増え、キャッシュレス決済を選ぶ消費者も増え、キャッシュレス決済が「新しい日常」となってきています。
コロナ感染者ゼロの国、パラオの事例
今後は新型コロナウイルスとうまく付き合いながら旅行することが大切です。観光地にとっても観光する人にとっても”無理をしない”のがニューノーマル。
そこで、観光地の自然環境や生活に配慮しながら観光を楽しむ「サステイナブルツーリズム」が注目されてきています。
パラオは、サステイナブルツーリズムが最も成功している国のひとつであり、2021年1月現在コロナ感染者ゼロの国でもあります。
▼パラオとは?
パラオ共和国、通称パラオは、太平洋上のミクロネシア地域の島々からなる国。国名は、マレー語で「島」を意味する「Pulau」が由来となっています。およそ586の島々で形成されており、世界中のダイバーたちが注目する美しい海には、知られざるパラオの魅力が、島ごとに隠されています。詳しくは「パラオタイムス|観光スポット」をご一読ください。
ここからは、パラオのサステイナブルツーリズムや感染症対策などの取り組みを紹介していきます。
パラオ・プレッジ|持続可能な観光保護宣言
パラオは、入国前から「サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)」が全面的に強調されているのが特徴です。
入国スタンプとして「パラオ誓約書(Palau Pledge)」が押され、署名を求められます。これは、パラオの環境保護を誓った方のみ入国が許される仕組みです。
パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません。引用:在日パラオ共和国大使館公式ページ
これによって、パラオの環境を守るという誓約をパスポートに記します。また、ハリウッド俳優のレオナルド・デカプリオがこの取り組みに賛同したことも有名です。
Proud to support the #PalauPledge, a new conservation initiative for visitors. Written with the help of Palau’s children, every visitor must pledge to heal & secure the natural environment for future generations. Learn more at https://t.co/UE96LkATZ6. pic.twitter.com/Gxjonhlkx8
— Leonardo DiCaprio (@LeoDiCaprio) December 9, 2017
自然と共生した持続可能なホテルが多い
パラオには、自然と共生したサステイナブルなホテルが多いのが特徴です。
高級リゾートホテルのひとつ「パラオ・パシフィック・リゾート」は、建設地の樹木をできる限り残すなど、自然環境に配慮しながら開発されました。それだけでなく、屋根には太陽光パネルを設置しており、再生可能エネルギーを活用しています。
出典:楽天トラベル公式ページ
とくにパラオ・パシフィック・リゾートには、水上バンガローがあり、独占できる海も広がっているので人混みを避けることができます。ニューノーマル時代の観光におすすめのホテルといえるでしょう。
2021年1月現在、パラオには観光客がほとんどおらず、ホテルでは「池の水をぜんぶ抜く」など今しかできない清掃活動を行っています。
【コロナ収束後はパラオへ❗️】
当館が所在するパラオパシフィックリゾート(PPR)は、現在もなお地元の人々の癒しの場としてオープンしていますが、海外からの宿泊客はほぼゼロ😭
この機会にPPRは、「池の水ぜんぶ抜く」清掃作業を行うなど、ピンチをチャンスに変える取組を行っています‼️ @Palau_PPR pic.twitter.com/3wkwrC7NMv— 在パラオ日本国大使館(Embassy of Japan in Palau) (@OfPalau) May 2, 2020
海洋保護を徹底したマリンアクティビティ
パラオでは、大自然が残る海でダイビングやシュノーケリングなどのアクティビティを楽しむことができます。
アクティビティでは下記行為を禁止するなど、海洋保護を徹底しているのが特徴です。
- 生き物の持ち帰り禁止
- 餌やり禁止
- フィンで珊瑚やクラゲを傷つけない
- 珊瑚に有害な成分を含む「日焼け止め」の禁止
パラオのマリンアクティビティは、自然環境保護などの社会問題について考えるきっかけとなるでしょう。
なお、大自然の中でのアクティビティなので、三密の回避もできます。シュノーケリングマスクなどツアーで使用するものはすべて消毒するなど、感染予防対策を徹底している傾向がみられます。
▼パラオの感染症対策(ロックアイランドツアーカンパニー)
そのほかマスクの着用、体調の確認、アルコール消毒の実施など、日本と変わらない対策を行っているので、安心して楽しむことができるでしょう。
ワクチン接種で観光再開に期待
2021年1月、パラオでは新型コロナウイルスのワクチン接種がスタートしました。
早々に現大統領(トミー・レメンゲサウ氏)と次期大統領(スランゲル・ウィップスJr.氏)が接種し、パラオ国民に安全性を示しています。
1月2日、米国がパラオに供与する新型コロナのワクチン第1弾が到着し、翌3日、まずは医療関係者等から接種が始まりました🇺🇸🇵🇼
国民にワクチンの安全性を示すため、早速接種を済ませた現大統領と次期大統領は、ワクチンの普及によるパラオの観光業再開への期待を表明しました。https://t.co/lR8yI3A7TT— 在パラオ日本国大使館(Embassy of Japan in Palau) (@OfPalau) January 5, 2021
パラオは観光立国ということもあり、ワクチン普及による観光業再開が期待されます。
なお、ワクチン接種の強制はしておらず、人口※の約80%を目標に集団免疫の獲得を目指しています。
※パラオの人口:1万7,907人(引用:外務省パラオ基礎データより)
手洗いおよび手先消毒の実施
パラオは新型コロナウイルスの感染者ゼロですが、パラオ保健省はマスク着用や頻繁な手洗い・消毒を推奨しています。
【今週の日本語由来のパラオ語】エイセイ(衛生)
パラオ語の「エイセイ(eisei)」は、日本語の「衛生」と同じ意味で使われています。
パラオでは新型コロナウイルスの感染者は確認されていませんが、「エイセイ」管理を徹底するため、保健省は国民に手洗いやアルコール消毒を呼びかけています。 pic.twitter.com/VU1zzpaGtm— 在パラオ日本国大使館(Embassy of Japan in Palau) (@OfPalau) March 27, 2020
そのほか三密の回避など、日本と変わらない対策を行なっています。
また、噛みタバコのような嗜好品(ビートルナッツ)があるパラオならではの「つばを吐かない」という感染防止対策もあるのが特徴です。
新型コロナウイルスの感染者が確認されていないパラオですが、人口が最大のコロール州はポスターを作って感染予防を呼びかけており、日本語版も見かけます。
ちなみに「つばを吐かない」が予防対策として明記されているのは、嗜好品のビートルナッツ(ビンロウ)を噛んでつばを吐く人がいるためです。 pic.twitter.com/Wa93BN9RxY— 在パラオ日本国大使館(Embassy of Japan in Palau) (@OfPalau) April 19, 2020
防災・クリーンエネルギー融資計画
パラオは2020年3月から国境封鎖を開始し、2021年1月現在もパラオへの国際定期旅客便の運航は停止中です。パラオの観光収入はGDPの50%以上を占めているので、新型コロナウイルスによる経済的打撃は計り知れません。(参考:在パラオ日本国大使館)
そんな中2020年12月、アジア開発銀行(ADB)貧困削減日本信託基金を通じた無償資金協力「防災・クリーンエネルギー融資計画」の署名式が行われました。
この計画は低所得者や女性世帯主を対象としており、住宅屋上へのソーラーパネルおよび太陽熱温水器の購入・取付を促進する低利融資を実施する予定です。
再生可能エネルギーにより電気代などの支出が減り、家計援助に繋がります。コロナ禍における生活苦をサポートしつつ、地球にも優しいサステイナブルな支援となるでしょう。
また、パラオ政府は、2025年までに再生可能エネルギー割合を45%にすることを目標としており、その目標達成も促進される見込みです。詳しくはADB貧困削減日本信託基金を通じた無償資金協力「防災・クリーンエネルギー融資計画」署名式をご一読ください。
日本からバーチャル体験!オンライン海外旅行
ここまでご覧いただければ、ニューノーマル時代の観光は、今まで以上に「無理をしない」「安心・安全」な対処が求められていることが分かったかと思います。しかし、なかなか旅に出づらいときでも、旅先の絶景や文化は気になってしまうものですよね。
そんなニューノーマル時代の観光として、人気を集めているのが「オンライン旅行」です。オンライン旅行とは、ビデオチャットサービスZoomなどを利用し、自宅にいながら海外・国内旅行を楽しめるイベントを指します。
さまざまな団体や個人が企画をしており、パラオについても3大観光スポットを巡るツアー、パラオの人気スポット「ブルーコーナー」を潜るバーチャルダイビングツアーなど、さまざまなオンラインイベントがありますよ!
たとえば「楽園!パラオちゃんねる」のイベントは、ガイドブックとはひと味違う、パラオ現地在住者ならではの視点で「空・海・島・食・ライフスタイル・戦争遺跡」を紹介しているのが魅力です。
特別ゲストである在パラオ日本国大使館・柄澤彰大使からのメッセージが聞けたり、パラオ現地で活躍するダイビングガイド、遊覧飛行パイロット、シェフなどプロが解説してくれたりと見どころ満載。
楽園!パラオちゃんねるは、定期的にオンラインイベントを開催しているので、ぜひ参加してみてくださいね。
▼イベント紹介
- 南洋の楽園・パラオ 〜はじめて行くパラオ旅編〜
- 日時:1月31日(日) 20:00~21:45頃(19:50開場)
- 参加費:無料
- 対象:パラオにまだ行ったことがない方&楽園!パラオちゃんねるイベント初参加の方
- 詳細:「南洋の楽園・パラオ〜はじめて行くパラオ旅編〜 参加費無料」
“楽園!パラオちゃんねる”とは?
「南洋の楽園・パラオ共和国」の魅力をお届け!どこまでも青い空と海、世界遺産ロックアイランドの島々はまさに“手つかず”の楽園。 日本に居ながらパラオ気分を楽しめるオンライン旅イベントを中心にFacebook・YouTubeを通してパラオの魅力を満喫。 ガイドブックとはひと味違う、パラオ現地在住者ならではの視点で「空・海・島・食・ライフスタイル・戦争遺跡」などについて知ることができるかも!?
まとめ|ニューノーマル時代の観光を楽しもう
パンデミックにより日常生活が一変しました。これからは、ウィズコロナを念頭に置いてニューノーマルな旅行を楽しみましょう。ソーシャルディスタンスの確保やPCR検査の実施など、旅行する人にとっても観光地にも”無理をしない”のが大切です。
今後は、観光地に配慮しながら旅行を楽しむ「サステイナブルツーリズム」がますます人気になるでしょう。サステイナブルツーリズムは「サステイナブルツーリズムとは?効果とパラオの成功事例を紹介」で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
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