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海洋汚染の対策を徹底解説|海洋保護先進国・パラオの事例も紹介

海洋汚染の対策を徹底解説|海洋保護先進国・パラオの事例も紹介

海の豊かさを守るために、私たちができることは日常生活の中にあります。

世界経済フォーラムの報告書(2016年)によると、2050年には海洋プラスチックごみの重量が魚の重量を超える可能性があるとのことで、海洋汚染は極めて深刻です。

本記事では、海洋汚染の原因と私たちの生活に及ぼす影響、国や企業が取り組んでいる海洋汚染対策、私たち個人ができることについて解説しています。

使い捨てプラスチック製品を控えたり、日常生活で使う素材を変えたり、ちょっとした行動が海を守ることに繋がるので、ぜひ参考にしてくださいね。

海洋汚染とは?原因と私たちの生活に及ぼす影響

海洋汚染の原因は、ごみのポイ捨て、ごみの不法投棄、船の事故による石油の流出、工場や家庭からの排水が海に流れ込むことなどさまざまです。東京湾で捕れたカタクチイワシの内臓から、マイクロプラスチックが検出されたとの調査結果※2もあるなど、海洋汚染は私たちの生活に深く関わっています。

海洋汚染は、生態系の破壊だけでなく、私たちの食べる魚が減ることも意味します。実際に、魚類資源の割合は約40年で90%から67%へ減少したと言われています。いつも食べている魚介類が数十年後には食べられなくなる可能性も十分ありえるのです。

出典:Unicef公式ページ

海洋汚染の大半はプラスチックごみによるものです。つまり、使い捨てプラスチック製品を控えたり、日常生活で使う素材を変えたり、ちょっとした行動が海を守ることに繋がります。

参考:マイクロプラスチックって何だ?

海洋汚染対策はSDGsに掲げられている国際的な取り組み

海洋汚染対策は、持続可能な開発目標(SDGs)にも掲げられている国際的な取り組みです。

▼持続可能な開発目標(SDGs)とは?
持続可能でより良い社会の実現を目指す世界共通の目標のこと。2030年を達成目標年とし、17のゴールと169のターゲットから構成されている。参考:国連開発計画

SDGsでは「海の豊かさを守ろう」をひとつのゴールとしており、ゴール達成のために私たちができることとして下記内容を提案しています。

  • サステイナブル・シーフード
  • プラスチックごみの削減努力

サステイナブル・シーフードとは、水産資源と環境に配慮して水揚げされた水産製品のことで「MSC漁業認証」と「ASC養殖場認証」の2種類あります。

 

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法に反した漁業、魚の取りすぎなども“海の豊かさ”に関わっているため、これらのマークがついている魚介類を食べるだけでもSDGs目標「海の豊かさを守ろう」を応援することになります。

※参考:国際開発センター

国や企業が取り組んでいる海洋汚染対策

海の豊かさを守るために、世界各地でさまざまな対策が行われています。まずは、国や企業がどんな取り組みを行っているのか具体的な事例を見ていきましょう。

プラスチック製品の削減

出典:Unicef公式ページ

紙ストローを使用する飲食店が増えたり、レジ袋が有料化になったり、プラスチック製品の過剰な利用を抑制するための取り組みが世界各国で行われています。

このように、企業や個人が使い捨てプラスチックの提供を廃止することは、結果的に海洋ごみを減らすことに繋がります。

海洋ごみを素材にしたサステイナブルファッション

出典:ECOALF公式ページ

ファッション業界は、世界で第2位の汚染産業といわれており、毎年約50万トンものマイクロファイバーを海に投棄していると問題視されているのをご存知でしょうか。

そこで近年は、地球に優しいサステイナブル(持続可能な)ファッションが注目を集めています。なかでも、スペイン発のサステイナブルファッション「ECOALF(エコアルフ)」は、これまでに500トン以上の海洋ごみを海底から回収してファッションアイテムとして再生させる海洋汚染対策に力をいれているのが特徴です。

 

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ECOALFは、海洋ごみを収集してウェアをつくったり、不要になった漁網などのナイロン廃棄物をリサイクルしたり、再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで衣類をつくっています。ECOALFのようなサステイナブルファッションを応援することも、私たちができるひとつの海洋汚染対策なのです。

※参考:国際連合広報センター

自然環境を汚さないと誓った旅行者のみ入国可能

上空から見るセブンティアイランド

海洋汚染対策を行っているのは、企業だけではありません。南太平洋に浮かぶ島国・パラオでは、国全体が海洋保護に力を入れています。

パラオに入国する際、入国スタンプとして「パラオ誓約書(Palau Pledge)」が押され、署名を求められます。これは、パラオの環境保護を誓った方のみ入国が許される仕組みです。

出典:在日パラオ共和国大使館公式ページ

 

パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません。引用:在日パラオ共和国大使館公式ページ

これによって、パラオの環境を守るという誓約をパスポートに記します。このようなスタンプを押す国は他にないので、旅の思い出にもなるでしょう。

また、パラオは海洋保護を徹底したアクティビティや、環境に配慮して開発されたホテルなどが多く、サステイナブルツーリズムの成功事例としても有名です。

パラオでは、珊瑚に有害な日焼け止めの禁止など、一人ひとりが環境に配慮した行動をとらなければなりません。パラオ旅行そのものが“海洋汚染対策”になるのです。

サステイナブルツーリズムとは?パラオの成功事例をもとに徹底紹介

海洋汚染を防ぐために私たち個人ができる対策

海の豊かさを守るためには、一人ひとりができることに取り組むことが大切です。ここでは、海洋汚染を防ぐために私たち個人ができる対策をまとめました。今日から始められる対策もあるので、ぜひ参考にしてくださいね。

ごみをポイ捨てしない、ごみを見つけたら拾う

海には、ペットボトル、お菓子のパッケージ、レジ袋など、たくさんのプラスチック製品が漂っています。これらはポイ捨てによるものも多く、まず私たちにできるのは、ごみをポイ捨てしないこと、ごみを見つけたら拾うことです。

海から離れた場所であっても、ごみは風や河川に流されて海にたどり着くので、シャンプーボトルやチリトリ、洗濯バサミなどの生活用品も海に落ちています。

コロナ禍ということもあり、最近は使い捨てマスクやゴム手袋のごみも目立ってきました。特に不織布マスクはプラスチックの一種なので、微生物の力では分解されにくいのが特徴です。


また、ビーチクリーン(海岸清掃)に参加することも海洋汚染対策に繋がります。清掃後、綺麗になった海でヨガをする「ビーチヨガ&ビーチクリーン」など、ごみ拾いを楽しめるプロジェクトがたくさんあるのでぜひ参加してみましょう。

日用品の素材を意識する

私たちの周りにはプラスチック製品が溢れています。洗顔料や歯磨き粉に含まれているマイクロビーズや、コスメや服に入っているラメも、実はマイクロプラスチックの一種です。

使い捨てプラスチック製品を控えたり、日用品の素材を意識したりするだけでも、海を守ることに繋がります。下記に、私たちができる海に優しい行動をまとめました。

  • マイボトル、マイバッグ、マイ箸を利用する
  • 繰り返し使える食品保存用キッチンラップを使う
  • 綿のふきん、たわし、植物由来のスポンジを使う
  • 合成繊維でつくられた衣類を控える
  • マイクロビーズ入りの洗顔料やボディソープを使わない
  • ラメ入りのコスメや衣類を控える

プラスチック製品の利用を控える、繰り返し使える素材を使うなど、私たちにできることはたくさんあります。ぜひ、できることから始めてみましょう。

▼プラスチック容器を使わないシャンプーバー(LUSH)

 

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海洋汚染対策の取り組みを応援する

海洋汚染の取り組みを応援するだけでも、海を守ることに繋がります。たとえば、海洋保護の先進国であるパラオは、観光客による環境破壊が問題となっていました。

そこでパラオ政府は、観光客に観光保護誓約への署名を義務付けするなど、海を守るための対策を講じています。ここからは、世界的に有名なパラオの海洋汚染対策を詳しくみていきましょう。

プリスティン・パラダイス環境税

パラオでは、観光客から「プリスティン・パラダイス環境税」として1人あたり100USドルを徴収しており、この税金はパラオの自然環境を保護することを目的としています。

パラオ行きの航空券に「プリスティン・パラダイス環境税」が上乗せされているので、国全体が環境保護に力を入れていることを観光客に強調する効果もあるのが特徴です。

また、パラオ国民やパラオ国民の配偶者、パイロットなどの乗組員、外交官など、観光を目的としていない人々は、後日還付を受けることができます。

生物多様性の保全に力を入れたアクティビティ

パラオでは、砂や貝殻などの持ち出しを禁止していたり、アクティビティ参加に許可証が必要だったり、海洋保護に力を入れているのが特徴です。

  • ジェリーフィッシュレイク(クラゲが住む湖)

クラゲと一緒に泳ぐシュノーケリングツアーが人気で、ツアー前はクラゲを傷つけない泳ぎ方を習います。アクティビティ参加には許可証(100USドル)が必要。水質保護のため、湖に入る直前に日焼け止めを塗る行為は禁止されています。詳しくは「ジェリーフィッシュレイクの観光ガイド|無数のクラゲと泳ぐパラオの定番スポット」にて解説しています。

  • ミルキーウェイ

ミルキーウェイでの泥パック

美白効果があるとされる天然泥パックを楽しめるツアーが人気。泥の持ち出しは禁止されています。ロックアイランド許可証(50USドル)が必要です。詳しくは「ミルキーウェイの観光ガイド|天然泥パックを楽しむパラオの定番スポット」にて紹介しています。

このようにパラオでは、海に何も持ち込まないこと、海から何も持ち出さないことを徹底しています。持続可能な観光(サステイナブルツーリズム)の成功事例としても有名です。

サステイナブルツーリズムとは?パラオの成功事例をもとに徹底紹介

珊瑚に有害な物質を含む日焼け止めの禁止

近年、日焼け止めに含まれている一部成分が、珊瑚に悪影響を与えると問題視されています。そこでパラオは、2020年1月に世界で初めて「日焼け止め」に関する法律を施行しました。内容としては、珊瑚に有害な日焼け止めの持ち込みを禁止するというもの。

持ち込んでしまった場合、罰金として1,000USドルが課せられます。輸入・販売の禁止はもちろんのこと、観光客による持ち込みも禁止されているので注意が必要です。

パラオでは、サンゴ礁に影響を与えない日焼け止めのみ販売されているので、現地で購入するのも良いでしょう。成分の詳細は、在パラオ日本国大使館の「サンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの禁止について」をご確認ください。

海洋保護の先進国パラオについて詳しく知ろう

海洋保護の先進国であるパラオは、約50万平方キロメートルの海を海洋保護区に指定するなど、国が環境保護を徹底しているため、手付かずの大自然が残っているのが魅力です。

一時期、オーバーツーリズムによる海洋汚染が問題となっていましたが、環境保護を誓った方のみ入国が許される仕組みをつくるなど、海を守るための対策を率先して行っています

そんなパラオは文化価値も評価されており、観光スポットのひとつロックアイランドは、世界遺産のなかでも珍しい「世界複合遺産」に登録されました。

  • マッシュルーム状の島々が紺碧の海に浮かぶ優れた自然美
  • 2,000年から3,000年前に遡る定住者の岩絵や遺跡
  • マリンレイク(海水が混じる湖)が生み出す多様な生態系

楽園とも呼ばれるパラオですが、実は第一次世界大戦後、約25年間に渡って日本の統治下にありました。このような歴史的背景からパラオは親日国としても知られており、さらに日本語由来のパラオ語が1,000語近くあるなど、日本人が訪れやすい国でもあります。

パラオの行き方は「【2021】パラオ行き直行便の就航状況|フライト時間や時差、行き方について」にて解説しているので、ぜひご確認ください。

ニューノーマル時代の観光とは?コロナ感染者ゼロのパラオを事例に徹底解説

まとめ|海の豊かさを守ろう!

海の豊かさを守るためには、一人ひとりができることに取り組むことが大切です。

使い捨てプラスチック製品を控えたり、サステイナブル・シーフードを選んだり、日常生活で使う素材を意識してみたり、ちょっとした行動が海を守ることに繋がります。

また、海洋汚染が問題となっている昨今、環境に配慮しながら旅行を楽しむ「サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)」が注目されてきています。詳しくは「サステイナブルツーリズムとは?効果とパラオの成功事例を紹介」をご一読ください。

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