パラオの人気観光地・ロックアイランドの西部にある「ジャーマンチャネル」はドイツ統治下に作られた人工水路です。
ジャーマンチャネルはドイツ軍がアンガウル島で採掘したリン鉱石を運ぶ時間を短縮するために作られましたが、今でも船舶の通り道として活用されています。
オプショナルツアーでよく訪れるパラオで有名な絶景で、水平線にまっすぐ伸びる水路を背景に美しい写真を撮ることができます。
船舶のほかにダイバーたちが憧れるマンタ(オニイトマキエイ)の通り道にもなっているので、世界的にも珍しいマンタと遭遇率が高いダイビングポイントとして人気です。
ジャーマンチャネルは人工的に作られた大きな水路
「ジャーマンチャネル」という言葉はドイツ(ジャーマン)によるチャネル(水路)を意味します。チャネルと付く場所はほかにもパラオにあります。
ウーロン島の北西にある「ウーロンチャネル」やバベルダオブ島の北部にある「エビールチャネル」などが代表ですが、ジャーマンチャネルは人工的に作られた一方で、ウーロンチャネルやエビールチャネルは自然にできた地形です。
1899年から1914年までパラオを統治していたドイツが手掘りやダイナマイトを利用して、ゲメリス島とカープアイランドの間のサンゴ礁を掘削して、船舶が通れる深さの水路を作ったのがジャーマンチャネルのはじまりです。
当時はドイツがペリリュー島の南西にあるアンガウル島でリン鉱石を採掘しており、コロール島やバベルダオブ島への輸送時間を短縮するためにジャーマンチャネルが活用されました。
その後、パラオの統治国はドイツから日本、そして第二次世界大戦を経て、アメリカへと代わりますが、第二次大戦後もしばらくはリン鉱石の採掘は続きパラオの経済を支えました。
現在ではリン鉱石採掘はしておらず、ジャーマンチャネルを通る船舶はツアーボートが中心です。
パラオには、ブルーコーナーやビッグドロップオフなどの世界的に有名なダイビングポイントが複数ありますが、ジャーマンチャネルはマンタとの遭遇率が非常に高い場所として知られています。
ダイバーにとってマンタは幸運の象徴とされているぐらい珍しい生き物です。ジャーマンチャネルにはマンタのクリーニングステーション(小さな魚に寄生虫を取り除いてもらう場所)があるため、マンタが頻繁に訪れます。
船から見るジャーマンチャネルは深さの違いによって色が変わる光景が魅力的。潮の満ち引きによって現れる「ロングビーチ」や黄金に光るクラゲが生息する「ジェリーフィッシュレイク」と並んで、パラオの絶景としてツアーでも定番の観光スポットです。
運が良ければ、海中を泳ぐマンタを船の上から肉眼で見つけることもできます。
ジャーマンチャネルでのダイビング体験談
パラオ旅行の際に、ジャーマンチャネルに潜るダイビングツアーに参加することができたので、ツアーの様子を紹介します。ちなみに、筆者はダイビングのオープンウォーターライセンスを持っていますので、ジャーマンチャネルには体験ダイビングではなく、ライセンス保有者のみのファンダイビングに参加しました。
なお、ライセンスを持っているとはいえ、ダイビングは数年ぶりです。ちょっと緊張します。
ダイビング出発前の準備
まず、ダイビングのスタートは宿泊先への迎えから始まります。この日は朝8時30分の迎えです。ダイビングショップでも着替えはできますが、出発から水着を着ていく方が楽です。
ダイビングの持ち物はこちらになります。ダイビングを終えて宿泊施設に戻ってくるまでお金を使う機会はほぼありませんので、貴重品は置いていっても大丈夫です。
- タオル
- 水着・ラッシュガード
- 日焼け止め
- ロックアイランド許可証
- 防水カメラ(持っていれば)
ダイビングに参加する場合、コロール州政府が発行するロックアイランド許可証が必要となります(6歳未満は不要)。1人あたり50USドルで、有効期間は10日間。ツアー会社を通して購入し、購入後は忘れずに携帯しましょう。
なお、ジェリーフィッシュレイク許可証(100USドル)があれば、ロックアイランドツアーの参加に必要なロックアイランド許可証を兼ねることができます。
ただし、ロックアイランド許可証を購入後にジェリーフィッシュレイク許可証を購入する場合は、新たに100USドルが必要となるため注意してください。
もし、ダイビングのほかにジェリーフィッシュレイク訪問を検討している方は、あらかじめ「ジェリーフィッシュレイク許可証」を購入するのが良いでしょう。
水中カメラはさまざまなものがありますが、筆者はアクションカメラのGoProと一緒に使うドーム型のガジェットを持って行きました。
「ダイビング中の写真は撮りたいけど、自信がない」という方はガイドに撮影をお願いすることもできますので、気軽に相談してみてください。
ダイビングショップに移動し、ダイビングツアーの準備
ダイビングショップに着いたら、同じダイビングツアーに参加するガイドとメンバーと顔合わせ。本日のガイドはミユウさんです。ガイドから海況や参加者の希望を元に、今日のダイビングポイントが発表されます。
どんなポイントなのかはダイビングの直前にも共有されますが、出発前に聞いておくと余裕を持ってダイビングに望むことができます。
パラオにはたくさんのダイビングポイントがあり、潮の流れに乗って移動するドリフトダイビングが主流です。日本国内では沖縄や伊豆、小笠原などの離島でドリフトダイビングが盛んです。
ドリフトダイビングの場合はダイバーの移動とともにボートも海上を移動するため、ボートはアンカーで海底に固定されず、いつでも動けるような状態です。そのため、一般的には潜降時に使えるロープが無いため自力で潜行します(ポイントによっては、アンカーとは別に潜行ロープが用意されていることもあります)。
ダイビング初級者の方にはロープなしでの潜行は少し難しく、なかなか潜れない方もいますが、焦らずに頭を海底にむけてフィンキックでゆっくり降りましょう。
久々のダイビングで不安がある方は、各ダイビングショップが開催しているリフレッシュダイビングや体験ダイビングに参加しておくのも有効です。
顔合わせと説明が終わったら、フィンやマスク、重りなどのチェックをします。慣れているダイバーが多いと、どんどん準備が進んでしまいますが、不安な点があればガイドにご相談ください。
筆者は過去のダイビングでうまく沈めなかったことがあるので、重りを多めにしました。ロープなしでの潜行も少し楽になります。
ボンベやレギュレーターなどの機械類はダイビングショップが用意します。陸上ではずっしりと重いボンベですが、海中までの辛抱です。
ダイビングスタート
ウェットスーツを着て、装備を積み込んだらジャーマンチャネルに出発します。ジャーマンチャネルまではコロール島から50分ほど。
酔いやすい人は酔い止めを飲んでから出発するのがおすすめです。筆者の場合は船では酔いませんが、海面に浮いている時に酔ってしまうことが多いので、今回も酔い止め常備です。
移動中、にわか雨が降ることがあります。ダイビングツアーの場合は、いずれにしても濡れるので気にしない人が多いですが、防水バッグを持参する人もいます。
ポイントに着いたら、タンクを背負ってエントリー前の最終確認です。タンクから酸素が供給されていること(写真では酸素の供給前なのでメーターがゼロを指しています)と、レギュレーターからも酸素が吸えることを確認できたら、いよいよ入水します。
ジャーマンでのダイビングはボートダイブになるので、ボートの端に腰をかけて後ろから入水します。酸素タンクが重いので、後ろにゆっくりと体重をかければ自然と入水できます。
入水後はガイドと離れすぎないようにして、メンバー全員でまとまってダイビングを楽しみます。潮の流れが強い場合は、思わぬ方向に流されることがありますが、焦らずに軽くフィンキックをしながら速度を調整してください。
サンゴ礁の近くには、南国特有の色鮮やかな魚たちがいます。2枚目に写っているのは、ツノダシ。今回は数匹でしたが、1月頃になると産卵のため100匹以上のツノダシが群れで泳いでいる光景が見られるそうです。
上を向くとギンガメアジの群れが浮かぶように泳いでいました。トルネードと呼ばれる、竜巻状に群れが集まる様子を見たかったのですが、今回はそこまでの大きな群れには遭遇しませんでした。
さて、ジャーマンチャネルでのダイビングの目玉となるマンタを見るべく、マンタのクリーニングポイントに到着しました。
マンタを驚かせないように、立膝をついてじっと待ちます。「見れる時は毎日見れるし、見れない時は1週間待っても見れない」と言われるジャーマンチャネルのマンタですが、今日はどうでしょうか。
待つこと、数分。マンタが来ました! 海の中を悠々と泳ぐマンタを驚かせないように気をつけつつ、メンバー全員でカメラを向けます。
横幅3mくらいのマンタが泳ぐスピードは想像よりも早く、ジャーマンチャネルを目の前をスーッと通り抜けて行きました。
旅行日程の関係で、ジャーマンチャネルでダイビングができるのは一回だけだったので、一発でマンタを見ることができてとてもラッキーでした。
ちなみに、さらに運が良ければプランクトンを捕食するために、大きく口を開けながら泳ぐマンタを見ることができるそうです。
無事にマンタも見ることができたし、あとは浮上して船に戻るだけ。かと思いきや、ガイドのミユウさんが風船のようなものを水面に浮かべました。
こちらはシグナルフロートと呼ばれる目印で、ボートに浮上地点を知らせるために使うそうです。潮の流れに沿ってダイビングをするドリフトダイビングの場合は、浮上地点が変化するのでフロートを使って見つけてもらうんですね。
ダイビング終了。お疲れ様でした!
無事にダイビングが終了しました! マンタを見ることができて、うれしそうなメンバーと一緒にダイビングショップに戻ります。
ショップに戻ったら、シャワーを浴びて、着替えたら本日のおさらいです。ダイビング中に見た生き物や分からなかったことを質問しつつ、ダイビングの時間や深度、水温などの記録をログブックに記入して終了です。
昼食込みのツアーもあります。慣れていない人はかなり疲れていますから、ゆっくりと休みましょう。暖かいお味噌汁が冷えた身体に沁みました。
ツアーのピックアップ時間は8時30分で、終了時間は14時でした。コロール島内にあるエピソンミュージアムやパラオ国立博物館の閉館時間は17時なので、ダイビングと島内観光を組み合わせると効率よく観光ができます。
ジャーマンチャネルで見ることができる海の生き物
ジャーマンチャネルのダイビングではマンタのほか、水面近くを群れで泳ぐギンガメアジやクマササハナムロ、ミナミイスズミと遭遇しました。
ほかにも、グレイリーフシャーク、ヘンマゴチ、チンアナゴ、ハダカハオコゼ、ヒメオニハゼなどの生き物を見られます。
ガイドのミユウさんに聞いたところ、ジャーマンチャネルは比較的小さな魚をじっくりと見れるのが特徴で、もっと大物を見たい場合は「ブルーコーナー」がおすすめだそうです。
ちなみに、ミユウさんお気に入りのダイビングポイントは「ウーロンチャネル」。砂地とサンゴのバランスが良く、サメの群れやギンガメアジのトルネードが見れるのが楽しく、ただ潮の流れがあるから、ダイビング中上級者向けとのことでした。
ジャーマンチャネルで潜れるダイビングツアー
人気の観光スポットであるジャーマンチャネルでダイビングを経験したい場合はダイビングショップに「ジャーマンチャネルで潜りたい」という旨を伝えておきましょう。海況や船に同乗する参加者の希望、ダイビング経験などでダイビングポイントが変わるためです。
また、減圧症を避けるために飛行機に乗る18時間前から24時間前はダイビングをすることができません(*1)。ダイビングの本数やダイビングショップの考え方によって、ダイビングから飛行機の搭乗までに空ける時間が異なるので、ショップにご相談ください。
*1 DAN JAPAN DD NETドクターからのアドバイス – 第2回 減圧症の予防
そのため、ジャーマンチャネルでダイビングする可能性を上げるためには、旅行日程の前半にダイビングツアーを予約するのが大切です。
ジャーマンチャネルに潜れるダイビングツアーを2つ、次にダイビングなしでジャーマンチャネルに訪れる2つのツアーを紹介しますので、参考に旅行計画を立ててください。
ファンダイビング(パラオパシフィックダイバーズ)
筆者が参加したジャーマンチャネルへのダイビングを主催しているパラオパシフィックダイバーズ。初心者向けの体験ダイビングからライセンス取得者向けのファンダイビング、モーニングダイブやサンセットダイブなど、基本的なダイビングプランが揃っています。
小規模のダイビングショップのため、大人数でのダイビングツアーを避けたい人におすすめです。
ショップはコロール島の中心部でインパックツアーズのすぐ隣にあるため、ボートツアーとダイビングツアーの組み合わせを考えている場合は、パラオパシフィックダイバーズ&インパックツアーズの2社と同時に相談しながら旅程を決められます。
- ツアー名:ファンダイビング(2ボートデイトリップ)
- 費用:大人 140USドル
- 所要時間:7.5時間
- Webサイト:ファンダイビング
2タンクボートダイブ(デイドリーム)
ジャーマンチャネルへのダイビングだけではなく、クルーズ船に乗船しながらダイビングを続けるダイビングクルーズやペリリュー島、テールトップなどの遠洋でのダイビングを考えている場合は、デイドリームにご相談ください。
ミッドナイトダイブ(深夜ダイビング)やレックダイブ(沈船ダイビング)などの中上級者向けプランも豊富の揃っています。
- ツアー名:2タンクボートダイブ
- 費用:大人 130USドル
(※別途6歳以上からロックアイランド許可証1人 50USドルが必要。現金のみの支払い可能) - 所要時間:7時間~9時間
- Webサイト:パラオでファンダイビング
スペシャルロックアイランドツアー(ロックアイランドツアーカンパニー)
ダイビングではなく、ツアーボートで船上からジャーマンチャネルを楽しみたい型は、ロックアイランドツアーカンパニーが主催する王道ツアー「スペシャルロックアイランドツアー」がおすすめです。
ジャーマンチャネルに加えて、パラオで人気の観光地である「ミルキーウェイ」、「ロングビーチ」を1日ですべて訪れることができます。
初めてのパラオ旅行で最初に参加するツアー、またはパラオでの滞在日程がタイトで1日でなるべく多くの観光スポットを訪れたい人におすすめです。
- ツアー名:スペシャルロックアイランドツアー
- 費用:大人 133USドル、子ども(3歳〜11歳)80USドル、2歳以下参加不可
(※別途6歳以上からロックアイランド許可証1人 50USドルが必要。現金のみの支払い可能) - 所要時間:約7時間
- Webサイト:ロックアイランドツアーカンパニー(RITC)
新サウスロックアイランドツアー(インパックツアーズ)
インパックツアーズが主催する「新サウスロックアイランドツアー」の特徴は、ジャーマンチャネルへの訪問(記念撮影とツアーボートでチャネルを通過)と、カープアイランドでのBBQランチ、2回のシュノーケリングが含まれていることです。
カープアイランドでのランチ休憩は1時間から1時間半ほどあるので、家族連れやカップルなどでゆったりとロックアイランドを観光したい人向けです。
- ツアー名:新サウスロックアイランドツアー
- 費用:大人 118.75USドル、子ども(3歳〜12歳)80USドル、3歳未満無料
(※別途6歳以上からロックアイランド許可証1人 50USドルが必要。現金のみの支払い可能) - 所要時間:7.5時間
- Webサイト:パラオで遊ぶならインパックツアー|新サウスロックアイランドツアー詳細
「ジャーマンチャネル」でパラオの海を楽しもう
船の上から眺めてもダイビングで潜っても楽しいジャーマンチャネルは、パラオの海を楽しむなら外せない場所です。
パラオは世界中のダイバーたちの憧れ。たくさんあるダイビングポイントの中でも、マンタと会えるジャーマンチャネルは初めてのパラオでのダイビングでもっともおすすめです。
ダイビングツアーは午前中で終わるものや早朝ダイブもありますから、ほかの半日ツアーと組み合わせることもできますよ。
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