サステイナブルツーリズム(Sustainable Tourism)は、日本語に直訳すると「持続可能な観光」を意味します。言い換えると、観光地をありのまま次世代に残そうと意識した旅行とも言えるでしょう。
サステイナブルツーリズムの成功例として、世界的に有名なのがパラオです。本記事では、パラオの成功事例を交え、サステイナブルツーリズムについて解説しています。
また、サステイナブルツーリズムを実施している宿泊施設も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
※記事内1ドル=108円で記載しています
サステイナブルツーリズムとは
サステイナブルツーリズムとは直訳すると「持続可能な観光」という意味で、「観光地本来の姿を次世代に残すための考え方や行動」のことを意味します。
近年、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に基づいた「サステイナブル・ツーリズム国際認証」の制度が生まれました。
“「サステイナブル・ツーリズム国際認証」とは?”
- 世界持続可能観光協議会(GSTC:Global Sustainable Tourism Council)が認定する認証機関が、各国におけるサスティナブルツーリズム達成度合いをはかる国際的な認証制度です。
- 国連が定めた「持続可能な開発目標(=SDGs)」や2017年の「開発のための持続可能な観光の国際年」などの国際的な基準に基づいています。
- 日本では観光庁が2020年6月に「日本版持続可能な観光ガイドライン」を定めましたが、未だにサステイナブル・ツーリズム国際認証の取得が進んでいないのが現状です。
たとえば、太平洋に浮かぶ島国「パラオ」は、観光客増加による水質汚染や環境破壊が問題となっていました。
観光立国であるパラオにとって、観光資源が破壊されることは、そこに暮らす人々の生活にも大きく影響します。観光客の行動がパラオに与えるインパクトは計り知れません。
そこで、パラオに入国する者には「パラオ誓約書(Palau Pledge)」をもって環境保護を宣言させるなど、「ありのまま」の観光地を持続させるための取り組みが進んでいます。
パラオに限らず、観光産業は、一旦破壊されると再生が困難と言われています。そのため、観光地本来の姿を次世代に残すための考え方や行動が注目されるようになりました。
サステイナブルツーリズムは、自然環境の保護だけではなく、その土地に暮らす人々の生活や文化を守ることにも繋がる施策と言えるでしょう。
パラオの成功事例に見るサステイナブルツーリズムの施策
出典:Palau Pristine Paradisek公式ページ
観光地の”ありのまま”を保護して持続可能なツーリズムを推進する活動で、最も成功している国の一つが、パラオ共和国です。
ミクロネシアに浮かぶ島国で「ダイバーの聖地」とも呼ばれる同国は、毎年人口の5倍以上の観光客を迎え入れながらも自然環境の保護に力を入れています。
実際にパラオの公式観光サイトが「Palau Pristine Paradise(手つかずの楽園、パラオ)」と宣言しているほど。
では一体、「持続可能な観光」は、どのようにして行われているのでしょうか?
本章では、パラオで行われているサステイナブルツーリズムの興味深い事例を紹介します。
1. パラオ・プレッジ
パラオのサステイナブルツーリズムで特出すべき点の一つは、入国前から「持続可能な観光」が全面的に強調されていることです。
パラオでは、入国時に入国スタンプとして「パラオ誓約書(Palau Pledge)」が押され、署名を求められます。これは、パラオの環境保護を誓った方のみ入国が許される仕組みです。
出典:在日パラオ共和国大使館公式ページ
パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません。引用:在日パラオ共和国大使館公式ページ
これによって、パラオの環境を守るという誓約をパスポートに記します。このようなスタンプを押す国は他にないので、旅の思い出にもなるでしょう。
また、ハリウッド俳優のレオナルド・デカプリオがこの取り組みに賛同したことも有名です。
Proud to support the #PalauPledge, a new conservation initiative for visitors. Written with the help of Palau’s children, every visitor must pledge to heal & secure the natural environment for future generations. Learn more at https://t.co/UE96LkATZ6. pic.twitter.com/Gxjonhlkx8
— Leonardo DiCaprio (@LeoDiCaprio) December 9, 2017
2. 餌やり禁止!海洋保護を徹底したマリンアクティビティ
パラオでは、大自然が残る海でダイビングやシュノーケリングなどのアクティビティを楽しむことができます。
パラオの地域によっては、マリンアクティビティに参加するために許可証を発行する必要があります。
また、下記行為を禁止するなど、海洋保護を徹底しているのが特徴です。
- 生き物の持ち帰り禁止
- 餌やり禁止
- フィンで珊瑚やクラゲを傷つけない
パラオのマリンアクティビティは、自然環境保護などの社会問題について考えるきっかけとなります。
3. 日焼け止めの持ち込み禁止
2020年1月、パラオは世界で初めて「日焼け止め」に関する法律を施行しました。内容としては、サンゴ礁に有害な日焼け止めの持ち込みを禁止するというもの。
持ち込んでしまった場合、罰金として1,000USドルが課せられます。輸入・販売の禁止はもちろんのこと、観光客による持ち込みも禁止されているので注意が必要です。
パラオでは、サンゴ礁に影響を与えない日焼け止めのみ販売されているので、現地で購入するのも良いでしょう。
成分の詳細は、在パラオ日本国大使館の「サンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの禁止について」をご確認ください。
4. プリスティン・パラダイス環境税
パラオでは、観光客から「プリスティン・パラダイス環境税」として1人あたり100USドルを徴収しています。
プリスティン・パラダイス環境税とは、パラオの自然環境を保護することを目的に徴収される税金です。また、国全体が環境保護に力を入れていることを観光客に強調する効果もあります。
なお、パラオ行きの航空券に「プリスティン・パラダイス環境税」が含まれているので、別途支払う必要はありません。
パラオでサステイナブルツーリズムに参加する方法
パラオは、国全体が自然環境保護に力を入れているので、訪れるだけでサステイナブルツーリズムとなります。
海洋保護を徹底しているマリンアクティビティが多いので、環境問題に目を向けるきっかけとなるでしょう。下記、生き物や環境に配慮したアクティビティの一例です。
ジェリーフィッシュレイクでは、クラゲの大群を見ることができます。パラオはクラゲの繁殖具合に応じて人の遊泳の可否を決めているので、参加するだけでサステイナブルツーリズムを実践することができます。
パラオのミルキーウェイは、ツアーの参加に許可証が必要だったり、天然の泥が持ち出し禁止だったりと、環境保護が徹底されています。
パラオでは砂や珊瑚、貝を持ち出すことも禁止で、サステイナブルな自然を維持しようとしているのです。だからこそツアーに参加するだけでも、サステイナブルツーリズムを実践することができます。
また、パラオは日本からも近く、直行便で5時間程度で到着するので、アクセスしやすいのも特徴です。
行き方の詳細は「【2020年最新】パラオへの行き方!直行便と経由便のフライト情報や到着後の流れ」で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
サステイナブルツーリズムを実施しているホテル
ここまでは、パラオを例にサステイナブルツーリズムについて解説してきましたが。もちろん日本国内でも実施している観光地はたくさんあります。
ここからは、サステイナブルツーリズムを実施している国内外のホテルを紹介しています。どれも素晴らしいホテルなので、ぜひ宿選びの参考にしてくださいね。
パラオ|パラオ・パシフィック・リゾート
出典:楽天トラベル公式ページ
パラオにある「パラオパシフィックリゾート」は、建設地の樹木をできる限り残すなど、自然環境に配慮しながら開発されているのが特徴です。
また、パラオは、サンゴ礁に有害な日焼け止めの持ち込みを禁止するなど、国全体が環境保護に力を入れています。そのため、訪れるだけでもサステイナブルな旅となります。
- 1泊あたり:390〜1,255USドル (約4万2,120〜13万5,540円)
- チェックイン:午後15:00
- チェックアウト:午後12:00
- 客室数:165室
- Wi-Fi:有り
- 住所:Koror, Republic of Palau 96940
- アクセス:パラオ国際空港より車で約30分
- その他:プライベーチビーチ有、シュノーケリング、カヤック可能
オーストリア|Boutiquehotel Stadthalle
出典:TripAdvisor公式ページ
オーストリア・ウィーンにある「Boutiquehotel Stadthalle」は、環境に優しいホテルとして有名です。
このホテルで使用されている電気は太陽光発電で賄っていたり、トイレに雨水を使用していたり、持続可能な宿泊施設となっています。
また、ウィーンの主要ショッピング街にも近く、アクセスが良いのも特徴です。音楽の都ウィーンでサステイナブルな旅行を楽しんでみてはいかがでしょうか。
- 1泊あたり:1万1,438〜2万2,725円
- チェックイン:午後14:00
- チェックアウト:午前11:00
- 客室数:79室
- Wi-Fi:有り
- 住所:Hackengasse 20, 1150 Wien, Austria
- アクセス:ウィーン国際空港からシャトルバスで約45分
徳島県|HOTEL WHY
出典:HOTEL WHY公式ページ
徳島県勝浦郡にある「HOTEL WHY」は、持続的な循環型社会を体験できる宿泊施設です。
ホテルがある上勝町は、ゴミを出さない「ゼロ・ウェイスト宣言」を行なっており、町全体のリサイクル率は80%を超えています。
ホテルには、使い捨て歯ブラシなどのアメニティがないので、ゴミを出さない循環型社会を体験できるのが特徴です。
- 1泊あたり:1万1,000〜3万1,500円
- チェックイン:午後15:00~17:00
- チェックアウト:午前9:00~10:30
- Wi-Fi:有り
- 住所:徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦7番地2
- アクセス:徳島阿波踊り空港から車で約1時間
長野県|カミツレの宿 八寿恵荘
出典:カミツレの宿 八寿恵荘公式ページ
長野県北安曇郡にある「カミツレの宿 八寿恵荘」は、カモミールのスキンケアブランドから生まれた宿泊施設です。
ヨーロッパの厳しいオーガニック(BIO)基準をクリアしており、日本で初めてBIO HOTEL認証を取得した宿でもあります。
また、アメニティのスキンケアやお風呂のお湯には、カモミール成分が配合されているのが特徴です。
- 1泊あたり:2万2,000円
- チェックイン:午後15:00
- チェックアウト:午前10:00
- 客室数:7部屋
- Wi-Fi:有り
- 住所:長野県北安曇郡池田町広津4098
- アクセス:JR・信濃松川駅から車で約30分
福島県|おとぎの宿米屋
出典:楽天トラベル公式ページ
福島県須賀川市にある「おとぎの宿米屋」は、BIO HOTELの認証を取得している、環境に優しい宿泊施設です。
食事には無農薬・無肥料野菜を使用していて、シャンプーやスキンケアなどのアメニティはオーガニック商品を提供しています。
また、天然の温泉水を冷暖房のエネルギーに変換するシステムを導入するなど、二酸化炭素排出の削減に取り組んでいるのが特徴です。
- 1泊あたり:2万9,150〜4万3,450円
- チェックイン:午後15:00
- チェックアウト:午前11:00
- 客室数:23部屋
- Wi-Fi:有り
- 住所:福島県須賀川市岩渕字笠木168-2
- アクセス:東北新幹線・新白河駅から車で約30分
まとめ|サステイナブルツーリズムで美しい地球を守ろう
サステイナブルツーリズムは「持続可能な観光」を意味します。
ゴミをポイ捨てしない、観光地のルールに従うなど、少し意識するだけでも「サステイナブルツーリズム」です。そしてその意識が、限りある観光資源、地域住民の生活や文化などを守ることに繋がります。
美しい地球を次世代に繋ぐためにも、サステイナブルツーリズムを意識しましょう。
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